はじめに:「母がすべて相続すれば一番得」は本当?
「父が亡くなったけれど、母がすべて相続すれば、配偶者の税額軽減で相続税は0円になる。それが一番得なのでは?」
このように考えていませんか。
確かに、配偶者の税額軽減を利用すれば、一次相続の税負担を大きく抑えられる場合があります。
しかし、一次相続だけを見て遺産分割を決めると、将来のお母様の相続、いわゆる「二次相続」で、お子様世代の相続税負担が激増し、トータルで大きく損をしてしまうケースがあります。
今回は、京都市内に複数の不動産をお持ちのご家族について、一次相続と二次相続を合わせて試算し、遺産分割を検討した事例をご紹介します。
ご相談内容:「母が全部相続すれば一番お得ですよね?」と考えておられたケース
- 被相続人:京都市内にお住まいのお父様
- ご相談者:お母様とお子様方
- 主な財産:京都市内の自宅、貸店舗、駐車場などの複数不動産および預貯金
ご家族は、「配偶者の税額軽減を使えば、1億6,000万円または法定相続分まで相続税がかからないので、母がすべて相続するのが一番得」と考えておられました。
そこで弊所から二次相続について確認したところ、まだ具体的な試算はされていませんでした。
そのため、相続税申告とあわせて、一次相続・二次相続を通算したトータルでの相続税額のシミュレーションを行わせていただくこととなりました。
二次相続で相続税が増えやすい3つの理由
シミュレーションの結果、一次相続でお母様に財産を集中させると、次の二次相続でお子様世代に重い税金がかかることがわかりました。理由は以下の3点です
① 基礎控除額が少なくなる
相続税の基礎控除は、
3,000万円+600万円×法定相続人の数
で計算します。
一次相続では「母+子ども」が相続人ですが、二次相続では「子どもだけ」になります。法定相続人が1人減るため、基礎控除額も600万円少なくなります。
② 配偶者の税額軽減が使えない
二次相続の主役はお子様方です。1億6,000万円の無税枠(配偶者控除)は使えないため、一次相続でお母様に財産を集中させると、その財産がお母様自身の財産と合わせて二次相続の対象になります。
③ 財産が集中すると税率が高くなることがある(累進課税)
相続税は、取得金額が大きくなるほど税率が上がる累進税率です。
また、京都の貸店舗や駐車場などの収益不動産をお母様が相続すると、その後の賃料収入によってお母様の財産がさらに増え、税率も上がってしまう可能性もあります。
シミュレーション結果を参考に、子どもにも一定の財産を「分散相続」することに
弊所では、以下のような複数パターンの分割案を作成し、一次・二次を通じたトータル税額を比較・ご提示し、ご家族の遺産分割協議のご参考にしていただきました。
- お母様が多く相続するケース
- お子様が多く相続するケース
- 不動産と預貯金の取得割合を変えるケース
当初はお母様がほぼすべてを相続するご予定でしたが、シミュレーション結果を踏まえて話し合われ、一次相続の段階で、お子様方も一定の不動産や預貯金を相続する方向で遺産分割をまとめられました。
今回のケースでは、一次相続で多少の相続税を負担しても、お子様にも財産を分けた方が、一次・二次相続を合わせたご家族全体の税負担を抑えられる結果となりました。
税金のことだけでなく「お母様の生活」「不動産の管理」も考慮して分割協議する
ただし、節税のためだけにお子様方へ財産を分ければ良いとは限りません。遺産分割では、以下のポイントを総合的に判断することがとても大切です。
- お母様の今後の生活費や介護費用の確保
- 不動産収入(家賃収入)の帰属と生活資金のバランス
- 小規模宅地等の特例(80%減額)が使えるかどうかの確認
- 不動産の共有回避(安易な共有は将来の売却や管理を困難にします)
過度にお母様に財産を集中させ、将来の二次相続でお子様方が過度な税負担を強いられることの無い様に配慮する一方で、相続税額だけにとらわれず、「お母様の安心した生活の確保」と「将来の不動産管理のしやすさ」も大切に考え、トータル視点でベストな分割案をご家族皆様で話し合って導き出すことが何より大切です。
まとめ:京都の不動産相続は「トータル視点」で
今回のポイントは次の3点です。
① 「一次相続の税金0円」だけに惑わされない(二次相続で税金が増えるリスクあり)
② 一次・二次の「トータルの相続税額シミュレーション」を行って比較する
③ 節税だけでなく「配偶者の生活費」や「不動産の管理方法」もセットで考える
宮岸会計税理士事務所では、京都市内の不動産評価や各種特例を踏まえ、一次相続と二次相続を合わせた相続税シミュレーションを行っています。
京都市内に自宅、貸店舗、駐車場など複数の不動産をお持ちの方は、遺産分割協議を確定(名義変更)してしまう前にご相談ください。
